10月27日に行われた衆議院選挙の結果、与党は過半数割れという結果となりました。いわゆる裏金問題により自民党の公認を得られなかった候補者は明暗分かれる選挙結果となりました。八王子市の大半をしめる東京24区の選挙区からは公認を得られなかった前職が当選するのか注目を集めましたが、小生居住エリアの選挙区は分割により立川市・日野市と同じ東京20区。こんな形で由木村が日野と合併した世界線が現実のものになろうとは。感慨深いものです。というわけで、月末恒例バス雑誌の感想という名の、同じ選挙区とはいえ立川の候補者が由木村エリアをどれだけ重視しているのか疑問なところ。偶数月はバスラマこと、『バスラマインターナショナル206号』です。
特集は10月刊行号恒例の「最新バス機器・用品ガイド」です。様々な商品・サービスを知ることが出来るだけでなく、バス業界という局所的なトレンド(と、専門誌に広告出稿する景気の良い企業)を知ることも出来る特集ですが、今回ガイドページに商品を掲載したのはわずか9企業。正直寂しいラインナップです。
特集と銘打たれていませんが、今号の中心はやはり各地に登場した電気バスの話題といえます。特にカルサンe-JESTの国内納車1号車・2号車の話題と、国際興業バスが導入したレトロフィット電気バスについて詳しく取り上げています。レポート・トピックスでは、日本各地で行われた「バスの日」関連のイベントなどを取り上げています。
小生的に気になったのは、やはり「京成グループがバス事業を再編」というトピックス記事。これは「
現在京成バスを筆頭に18社(整備会社1社含む)で展開するバス事業を、最終的に地域別の5つの事業者に再編成する 」という大掛かりなものです。
社番:1232.2024年3月記録。
京成電鉄グループのバス事業者各社では、既に不採算路線の移管やエリア調整を行っており、近年は車両のグループ間転籍事例も多く見られるようになりました。千葉内陸バスに在籍する画像のいすゞLRノンステップ車は京成タウンバスからの移籍車。塗装変更は最小限という感じですが、元カラーほぼそのままで使用しているグループ事業者も少なくないので、千葉内陸バスはまだ塗装変更する力があるといえそうです。
今回発表されたのは、まず「今年11月1日に京成電鉄100%出資の中間持株会社・京成電鉄バスホールディングス(HD)を設立、京成電鉄と各グループ会社が保有する固定資産の一部、および京成電鉄と新京成電鉄によるグループバス事業会社の経営管理事業を新会社に移管するとともに、バス事業会社の再編成を図る。再編は京成バス以外の各社が2025年4月1日、また京成バスは2026年4月1日の予定 」となっています。ちなみに中間持株会社の京成電鉄バスホールディングスは「現 昭和タクシー有限会社を商号変更 」とのこと。おそらくタクシー会社統合の過程で休眠状態となっていた会社を活用する。今後公表されるであろうホームページの会社概要は設立年と事業開始年がだいぶ異なることになるでしょう。そういえば1995年に千葉県成東地区の京成電鉄直営のバス事業を引き継いだ地域分社の「ちばフラワーバス」は有限会社冷熱サービスを商号変更したものだったことを思い出しました。
そんな余談はともかく、深刻なドライバー不足など様々な要因から地域分離子会社の再統合の動きがみられる昨今のバス業界ですが、新京成電鉄吸収合併のタイミングで京成バスと地域分離子会社の統合だけに留まらず、東京ベイシティ交通や千葉海浜交通・千葉内陸バス、1970年代に京成グループ入りした千葉中央バス、100年以上の歴史がある千葉交通も巻きこむ大掛かりな再編を行うとは驚きました。
2025年4月1日の再編で、京成タウンバスが「京成バス東京」、京成トランジットバス・松戸新京成バス・船橋新京成バス鎌ヶ谷営業所・東京ベイシティ交通を統合した「京成バス千葉ウエスト」、ちばレインボーバス・千葉海浜交通・京成バスシステム・船橋新京成バス習志野営業所を統合した「京成バス千葉セントラル」、千葉交通・千葉中央バス・成田空港交通・千葉内陸バス・ちばフラワーバス・ちばシティバス・ちばグリーンバスを統合した「京成バス千葉イースト」、統合に加わらず単独で京成電鉄バスHDの子会社に移行するのが「東京BRT」(2026年4月1日移行)と整備会社の「京成自動車整備」(2025年4月1日移行)です。
わざわざ複数の事業者に再編したのは効率的な路線再編だけでなく給与水準の関係もあると推測します。ドライバー不足で悩まされているこのご時勢、再編に伴う賃金水準の引下げなんかしたらドライバーの大量離脱は必至です。賃金水準の高い事業者に合わせるため損益分岐を考慮すると東京と千葉で分け、かつ「京成バス千葉」だけでもイースト・セントラル・ウエストの3つに分けるしかないのでしょう。ただ再編ありき過ぎて、愛社精神というか心情的なところがあまりにも考慮されていないような気もします。せめて社名だけでももう少し旧社名を尊重したもの、もしくは2000年代初頭のいわさきコーポレーションの愛称としての「鹿児島交通」のような形で残せないものか再考してほしいところです。とはいえ、この事業者再編で、これまで回送距離の長い飛地路線を移管ではなく担当営業所変更だけで済ませられることや、まとまった台数の新車導入によるコスト削減、車両転属が容易になるなど様々なメリットがありそうです。
事業者訪問は2003年刊行の77号以来、2度目の登場となる「千葉交通」。「
千葉県成田市を中心に、銚子に至る県北東部を広くエリアとする京成グループのバス事業者 」です。前回の事業者訪問では自家用車の普及と過疎化で深刻な経営危機に陥った千葉交通の再建の過程、路線再編・廃止代替バスの運行受託、高速バス事業の強化についてが話題の中心でしたが、今回はコロナ禍に大きく翻弄された現在の千葉交通のいまを紹介しています。掲載の「輸送人員推移」から一般路線バスの輸送人員は2003年時点からさらに減少しているものの、コロナ禍前は下げ止まりつつある状況だったようです。しかし2020年のコロナ禍で急減、2023年までにある程度まで回復しつつありますが、収益の屋台骨となっていた高速路線バスの輸送人員が2019年と比べ2023年はまだ半分程度というのが心配なところです。高速路線バスの輸送人員が回復しないのは依然として運休している路線があることだけでなく、千葉交通担当便だけが運休している路線の存在、高速車自体も2019年に比べ20台程度減車していることなど、そもそもコロナ禍前のレベルに戻す気が無いのかもしれません。もしかすると減車の状態を続けているのは、今回発表された京成グループのバス事業者再編の動きと絡んでいるのかもしれません。
社番:10-96.2DG-KV290N3(20年車)。2024年10月記録。
在籍車両はほぼ日野車と三菱ふそう車となっている千葉交通。一般路線用の「
大型車の大部分は需要が多く道路環境の良い成田営業所に配置 」されています。「
乗降方式は一部の停留所を除いて前乗り・前降りを採用 」しているため、「出入口」の表示は前扉だけとなっています。
画像の「
現行スタイルのブルーリボン(ディーゼル車)は2018年式以降の平成28年規制車のみで、型式末尾2~4の11台が在籍し、トルコンATを搭載 」しています。
ちなみに千葉交通の社番は-(ハイフン)前の頭数字が配置営業所、次位が年式(西暦)末尾1桁、-(ハイフン)以降の数字は固有番号となります。固有番号は導入順の連番だったり空き番号だったり、とにかく重複車両が無いように付番しています。
白地に濃淡ブルーという一般路線車の現行塗装デザインは2000年から採用しています。
社番:14-117.2SG-HL2ANBP(24年車)。2024年10月記録。
コロナ禍では新車導入を見送った千葉交通ですが、「
結果として整備コストが増えるなど定期的な代替の必要性を痛感 」したとのこと。以降積極的な新車導入を行っており、久々にハイブリッド車も登場しました。画像のブルーリボンハイブリッドは「
環境対策の一環 」として採用したようです。
現行のブルーリボンハイブリッド車は販売中止となるため、「
今後は電気バスの導入も含めカーボンニュートラルを図る方針 」とのこと。記事によると電気バスが「
今年末~来年初頭をめどに、第1陣として一般路線に大型車4台を導入 」するようです。
社番:H18-58.2DG-KV290N2(18年車)。2024年10月記録。
こちらは2018年の千葉交通創業110周年記念して登場した先々代の塗装デザインを施した復刻塗装車。「
このデザインは「銀バス」と呼ばれ、1992年の新車まで採用されたもの 」です。「社番も当時を再現して頭に車種を示す「H」を加えている 」こだわりようです。
ちなみに先代のデザインは1993年から1999年まで採用した「CHIBA BUS LINES」カラー。マーキングフィルムを多用した意欲的なデザインでしたが、フィルムの耐久性や劣化、補修などに課題があり短い期間の採用にとどまりました。
社番:18-74.2KG-KR290J3(18年車)。2024年10月記録。
中型車から、「
ノンステップに集約された現行スタイルのレインボー 」。「
2017~2024年式29台が在籍 」しています。
千葉交通はダウンサイジングのため一般路線車は中型をメインに導入してきましたが、「
ドライバー不足が深刻な課題となる中で輸送力と運行効率を図るため、昨今は大型車を主に導入 」しています。
社番:54-31.2PG-RU1ASDA(24年車)。2024年10月記録。
最後に高速バス車両から、24年導入の日野セレガ。「
高速車の標準塗装は京成グループ共通のデザインだが、千葉交通車と識別するためフロントガラス上部のルーフに青線を入れている 」のが特徴です。また側面には銚子所属車は画像の車両のように「イルカ」が描かれているほか、「
成田系統用は側面に飛行機のデザイン 」を描いています。
短期連載「カタログで偲ぶ“平成初期”のバス達」。第8回目は「三菱ふそうエアロスター」を取り上げています。掲載されたカタログは「1990年5月30日に発売された平成元年規制(U-)車 」のものとなります。三菱ふそうエアロスターは1984年に三菱ふそうの大型路線バスモデルとして販売を開始しました。「
顧客の選択肢や販売ルートを前提に名自製のエアロスターMと新呉自工製のエアロスターKが用意 」されました。掲載のカタログ発行時点ではエアロスターMとエアロスターKを並売していますが、掲載写真のほとんどがエアロスターMというのが特徴です。「
1993年8月に全数が三菱自動車バス製造(新呉羽が同年に改称)での生産に変更されるとともに、スタイルはエアロスターMに統一、名称はエアロスターに統一 」されることになるので、1990年時点でカタログの変更箇所を極力少なく出来るよう編集していたのかもしれません。
社番:706.2008年6月記録(再掲)。
平成初期のU規制車の手持ち画像から、広島バスに在籍していたエアロスターMと、
社番:717.2008年8月記録(再掲)。
エアロスターK。どちらも東京都交通局からの移籍車です。エアロスターKの方は都市新バス車だったので、エアサス、グライドスライドな前扉・上部開閉の側面窓・角型ヘッドライトを装備しているのでボディの見ため以上に違いがありますがそこはご容赦を。
ちなみに広島バスは富士ボディの愛用事業者でしたので、U規制車初期の自社発注車は三菱ふそうMPも富士7Eボディを架装しています。
前面・後面の造りが異なるエアロスターM・エアロスターKですが、「
骨格構造・リベットレスによるクリーンなボデースタイルと安全性に貢献する左方視野拡大窓を特徴としつつ、断面線図を一新したボデーデザイン 」は共通。「
わずかに傾斜の付いた側窓は天地寸法が大きく視界に優れる。外観上もスタイリッシュ 」でした。
このほか「新 バスドライバーのひとりごと」や海外記事など、おなじみの長期連載も掲載しています。
次号予告は、バス事業者訪問No259、電気バス最新情報、第10回バステクin首都圏レポート、カタログで偲ぶ“平成初期”のバス達 ほか とのこと。事業者訪問のヒミツが続くのは編集スタッフ減が原因なんでしょうか。わがままなお願いとはいえ、出来たら早めに知らせてほしいものです。
なお、本文中の「斜字 」部分は同誌からの引用部分、画像の型式・年式は掲載の車両一覧や記事を参照しています。
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