寒暖の差が大きかった今年の2月。スギ花粉も飛びはじめ、花粉症には厳しい日々となりました。というわけで、月末恒例バス雑誌の感想という名の、窓ガラスに降り積もった花粉にゲンナリ。偶数月はバスラマこと、『バスラマインターナショナル184号』です。
巻頭は2月刊行号恒例となった前年の「バスラマ賞」の発表。2020年のバスラマ賞を受賞したのは「コロナ禍で人々の生活を支える全国のバス事業関係者」となりました。とにかく新型コロナウィルスにふりまわされた2020年ですから、納得の受賞ではないでしょうか。
今号も特集と銘打ったものはありませんが、結構なページ数を割いているのが「電気バス最新事情報」と「沖縄のバス情報 2020→2021」です。
「電気バス最新情報」では、BYDの7mサイズ電気バス運行開始の話題や、四国電力が導入したアルファバスの話題を紹介しています。
「沖縄のバス情報 2020→2021」では、2020年に開始された「バス活性化を目指すいくつかの試み 」をはじめ、沖縄バスが2020年に導入した新車や、東京バスが運行を開始した路線バスなどなど、沖縄本島のバスに関するトピックをまとめています。
事業者訪問は初登場となる「大島旅客自動車」と「ことでんバス」の2事業者を掲載。
まずは伊豆大島でバス事業を展開する「大島旅客自動車」。事業者訪問に離島の事業者が取り上げられたことは瀬戸内海交通など過去ありましたが、グループの事業者としてではなく単独で掲載となるのは初めてでしょうか。大島旅客自動車は2003年に東海汽船直営のバス事業を分離した事業者で、「
バス事業者として独立した現在も船舶との連携を基本にしつつ、地元住民の生活と観光客対応の両面でバス事業展開 」しています。
記事では現況を中心に、1986年11月に発生した三原山噴火による全島避難の思い出など、伊豆大島とバスの関わりについてまとめています。
社番:973.KC-MS815N(97年車)。2019年11月に記録したものを再掲。
長らく「
乗合車も観光タイプの前扉車が主力だった 」大島バス。現在も乗合車の半数を占めます。まずはスタンダードデッカーな三菱ふそうMS。「ハイデッカー車より低いぶん、沿道の樹木との干渉が少なく使い勝手が良い 」とのこと。画像の車両は「
前向きシートはリクライニング機構も補助席も持たず、立席を含み定員80人の収容力は在籍車両中最大 」となっています。観光ボディのMSで立席定員を備えているのは珍しい仕様といえます。
社番:971.KC-MS829P(97年車)。2019年11月記録。
大島バスに「
2台在籍する富士重工業製のMS8 」。「
経年車だが三原山ラインなどでは低速トルクの大きさで評価が高い 」とのこと。
社番:012.2KG-KR290J3(17年車)。2019年11月記録。
近年は「
生活路線のバリアフリー化を進め、ワンステップ車とノンステップ車が増えている 」状況。画像は17年に導入した現行ボディの日野KR。「
車内シート配置は郊外型で定員57人、AMT装備 」とのこと。
社番:010.KL-HU2PMEA(04年車)。2019年11月記録。
個人的に残念だったのが、車両アルバムに日野HUワンステップ車の写真が掲載されなかったこと。千葉の平和交通からの移籍車で、黄色1色のベイタウンカラーだった車両です。標準塗装が黄色1色の大島バスに移籍したため、結果的に見たままそのままで走っている印象。車内も平和交通時代と変わらず中扉前に座席が無いシート配列となっています。
社番:161.QRG-RU1ESBA(16年車)。2019年11月記録。
貸切車は赤(椿)色塗装を採用。画像の折戸仕様の日野セレガは「
5台在籍する貸切車中のフラッグシップ 」的存在です。
続いて香川県高松市をメインとする「ことでんバス」。事業者訪問で香川県のバス事業者が取り上げられるのは高松に本社があるジェイアール四国バス以来。ただ、ジェイアール四国バスを香川県の事業者とするにはちょっと違う気がしますので、実質初といったところでしょうか。ともかく、これで事業者訪問未訪問県は和歌山だけのはずです。
さて、ことでんバスは戦後に誕生した高松バスを祖とし、1986年に高松琴平電鉄直営のバス事業を統合した際にコトデンバスと改称しました。2005年に現社名に再改称し、その後グループの徳島西部交通を吸収合併、さらにグループ企業から高松市内のタクシー事業も引き継ぎ、バスとタクシーそれぞれを営業する体制となっています。
かつては「
香川県最大の民営バス事業者として事業展開 」してきましたが、「
2000年代の経営再建を機に不採算化していた郊外型路線の大幅な廃止・短縮を進め、高松市内主体の路線網 」に縮小。平成の市町村合併により高松市の市域が拡大したこともあり、現在「
路線はすべて高松市内で完結する形 」になっています。
記事ではことでんバスの現況を中心に紹介するとともに、1970年代から80年代に編集長が撮影した徳島西部交通・高松バス・高松琴平電鉄の懐かしい車両写真をアーカイブスとして掲載しています。
香川230い1070.2KG-KR290J3(18年車)。2018年7月に記録したものを再掲。
「一般路線車は中型が主体 」となっている、ことでんバス。「中型車はすべて新車購入車で2003~2019年式70台が在籍し、全車ノンステップバス 」となっており、コトデンバス時代に導入した初期のノンステップ車は既に姿を消しています。画像は2018年に導入した現行スタイルの日野KRです。
ちなみに、ことでんバスでは「
2013年からは移籍車も含めて希望登録番号を採用し、乗合は1000番台 」(4と9は欠番)となっています。
香川200か464.PDG-KR234J2(11年車)。2019年7月記録。
「初代KRは計30台が在籍 」しており、ことでんバスの主力的存在となっています。 導入時期により側面窓に濃色ガラスを採用していたり、細かい仕様差があります。
香川230あ1038.TKG-MK27FH(16年車)。2019年7月に記録したものを再掲。
「一時期は一般路線車の主力であったふそうMK 」。「2017年に三菱ふそうが中型車を中止して以降は日野に集約 」されましたが、現在もノンステップ車22台が在籍しています。
香川200か347.U-MP218M(95年車)。2018年8月に記録したものを再掲。
「収容力が求められる路線に充当される 」大型車は8台在籍し、すべて移籍車となっています。ことでんバスでは異色の存在といえる西工58MCな三菱ふそうMPは、阪急バスからの移籍車。在籍車両では、残りわずかとなったツーステップ車です。
香川230あ1063.KL-MP37JK(03年車)。2018年8月に記録したものを再掲。
大型移籍車にもノンステップ車を導入しており、画像の車両は神奈川中央交通から移籍車。移籍車は導入にあたり大きな改造を行わないようで、神奈川中央交通の特徴的な装備といえる前面運賃確認窓はそのまま活用しています。
香川230あ1588.SKG-HX9JLBE(16年車)。2018年8月に記録したものを再掲。
小型路線車は4台在籍し、すべて日野車となっています。画像の車両は「
2015年に運行開始した「まちなかループバス」専用車の1台、ポンチョ・ロング1ドア車 」。「
フロントマスクはジェイ・バスの二次架装モデル「ルートンジュニア」 」仕様となっています。登録番号の1588は、「
香川県を代表する商業地で、ルートの主体をなす丸亀町の開町年を意味する 」とのこと。
香川200か352.PJ-MS86JP(07年車)。2019年7月記録。
高松駅と高松空港を結ぶ空港リムジンバス。18台の専用車が「
航空ダイヤにあわせて運行 」しており、「
全車ハイデッカーで、2019年式日野1台が新造車、それ以外は貸切からの用途変更車または移籍車 」となっています。
空港リムジン専用車の主力といえるのがMS8系エアロバスで、14台が在籍。画像の車両は3台在籍する「
宮城県の愛子観光バスからの移籍車。同社がごく短期間運行した仙台空港線用に新造された空港連絡バス仕様で、直結冷房を搭載 」しています。
香川200か514.QRG-RU1ASCA(16年車)。2019年7月記録。
「
貸切バスは高松市の本社営業所に28台、徳島営業所に11台を配置 」し、「
サイズ別では12mハイデッカー23台を主体 」に中型・小型に送迎用のマイクロバスも在籍しています。画像は現行スタイルの日野セレガで、フロントガラス下にオーナメントライトが無い廉価グレード車です。
連載は、「新 バスドライバーのひとりごと」や海外記事などおなじみの長期連載を掲載。
短期連載では「バリアフリー対応バスの系譜をたどる」の補遺を掲載。「近年の内外シティバスの新型車について、車内の機能性を確認 」ということで、東京都交通局が導入したスカニア/ボルグレン「フルフラットバス」とポルトガルのカエターノが欧州で販売展開を進めている燃料電池バスを取り上げています。また、この連載の写真撮影者と参考文献も紹介し、どうやらこれで連載終了ということのようです。
次号予告は、事業者訪問が福島交通、特集はバスガイドに注目!ほかとのこと。事業者訪問に福島交通が取り上げられるのは久々です。
なお、本文中の「
斜字 」部分は同誌からの引用部分、掲載画像の型式・年式は掲載の車両一覧を参照しています。
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