2022年も残すところわずか。中東カタールで開催されたサッカーW杯はアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。日本は厳しいグループに入ったと言われていたので、正直1勝も出来ないんじゃないかと思っていました。それが、ドイツとスペインに勝利してグループリーグを突破するんだから驚きです。2戦目のコスタリカに敗れ、手のひら返しの世論だったのが、なんだかなあという感じもしましたが。というわけで、月末恒例バス雑誌の感想という名の、遥か前のような気がしているサッカーW杯の決勝、実は12月。偶数月はバスラマこと、『バスラマインターナショナル195号』です。
特集と銘打ったものはない今号ですが、11月に開催した「第8回バステクin首都圏」について、当日の模様や出展企業の展示車両・商品を7ページという特集的なボリュームで紹介しています。また、10月に「ふじあざみライン」で発生した貸切バス横転事故についての記事も掲載しています。「運転者の責任を問うだけでは事故の原因解明には至らない 」というバスラマが以前から提言していたことを、また見ることになってしまうとは。あわせて読者から届いたという、貸切バス業界の本当のところが分かる芯を食ったコメントも紹介。これを掲載するのは、さすがバスラマという感じです。
レポートでは、旭川電気軌道が復活させた3軸バスMR430についての記事の読み応えが抜群です。前号で車検を取得したことを速報的に伝えていましたが、今回はレポートでは異例の7ページを割いて1年3ヶ月にわたるレストア作業を中心にまとめています。
各地のバスの話題を紹介したトピックスでは、三菱ふそうの改良モデル販売開始の話題のほか、全国で開催されたバスイベントを紹介しています。また、12月11日に開催された西武バス90周年大感謝祭についての記事も掲載。12月開催のイベントが12月刊行号の記事になろうとは。速報も良いところです。
事業者訪問は福島県いわき市を中心とした浜通り地域に路線網を展開している「新常磐交通」。旧常磐交通自動車のバス事業を2006年に引き継いだグリーンキャブグループの事業者です。事業者訪問では旧常磐交通時代の2004年刊行85号で取り上げており、実質2度目の訪問といえます。
記事では新常磐交通誕生のいきさつから、2011年の東日本大震災と原発事故の影響、そしてコロナ禍での営業などをまとめています。ドライバーは慢性的に不足しているが、「
震災復興を契機に需要が増えたトラック輸送や作業者送迎バスの方が総じて高い賃金を提示 」されてることや、貸切バスもハウスエージェントの仕事でさえ「
受注の7~8割は他の貸切バス事業者に傭車として運行を依頼 」していることなど正直に書かれているところを読むと、新常磐交通の取り巻く状況の厳しさを実感します。
在籍車両は「
2022年11月現在、一般路線車153台、高速路線車30台、貸切車22台 」となっており、約半分が日野車となっています。車両アルバムでは在籍車両の主要モデルのほか、保存車という北村ボディ架装のいすゞK-CJM500も紹介しています。
バスラマの事業者訪問掲載事業者くらいは最新手持ち画像を並べたいということで、久々にいわき市内へ出かけました。ここからは12月に記録した手持ち画像を並べていきます。
いわき22か467.U-LV324L(92年車)。2022年12月記録。
一般路線車は「
大型車64台、中型幅・全長10.5m車42台、中型車35台、小型車12台という内訳 」で、さらに旧常磐交通時代導入車、移籍車、新常磐交通導入車と分けることが出来ます。まずは旧常磐交通時代に導入したキュービックボディのいすゞLVツーステップ車。98年まで導入した前後扉仕様の大型車は残り10台となっています。
いわき200か732.2KG-LR290J3(18年車)。2022年12月記録。
新常磐交通となってから、一般乗合車への新車導入はごくわずか。2018年に導入した画像のいすゞLR2台と日野KR2台が「中型路線車では最新のグループ 」となります。
ちなみに現在の塗装デザインの「白地にグレー/赤のモザイク模様 」は旧常磐交通時代の2002年に採用されたものです。
いわき200か665.KL-HR1JNEE(02年車)。2022年12月記録。
一般路線車の車両代替は移籍車導入がメインとなっており、42台在籍する中型幅・全長10.5m車は全て移籍車です。移籍車は小田急バスなど首都圏事業者からの車両が中心で、近年は東京都交通局からコンスタントにまとまった台数移籍しています。画像は東京都交通局から移籍した日野HR。みんくる柄のシートモケットは貼りかえられていますが、シート配列はそのまま。「車内の戸袋部分をフリースペース 」が残っています。
いわき200か734.KK-MK27HM(02年車)。2022年12月記録。
東京都交通局から移籍した中型幅・全長10.5m車の大部分は日野HRですが、三菱ふそうMKも4台在籍しています。
いわき200か858.PJ-KV234L1(05年車)。2022年12月記録。
東京都交通局から中型幅・全長10.5m車が無くなり、大型ノンステップ車が移籍車の主流へ。新常磐交通もPJ規制車のいすゞLV、日野KVが既に移籍しています。なお、「移籍車は登録に際して、外装の再塗装を含むボデー整備やシート生地張り替えなどを外注で行っている 」とのこと。
いわき200か605.QTG-RU1ASCJ(15年車)。2022年12月記録。
移籍車がメインとなっている一般路線車に対し、高速路線車は積極的な新車導入を行っており、いまや30台全車が自社発注のJバス製の後部トイレ付ハイデッカーとなっています。いすゞボディのガーラや日野セレガRのFSなんか既に引退済みなんですね。印象のアップデートが追いつきません。
連載では、短期連載の「低公害バスの系譜をたどる」第5回CNGバス(1)。1990年代から2000年代にかけての「
日本におけるCNGバスの推移 」を簡単にまとめていますが、この連載は現在の目線で低公害バスを紹介しているので、メリット・デメリットをはっきり記述しているのが特長です。1990年代に脚光をあびたCNGバスが、なぜ現在廃れてしまったのか、その理由が分かるだけでも資料的な価値があります。
あわせて、今回は日産ディーゼル社製のCNGバスモデルを紹介しています。日産ディーゼルはCNGバスを「
業界に先駆けて実用化 」しました。
車号:4-4418.U-UA440HSN改(94年車)。2009年3月記録。
画像の横浜市交通局の車両が、「
1994年暮に全国8事業者に納入された最初のCNGバスの1台 」です。記事では扉側の写真が掲載されているので、ここでは後面側の画像を。ホイルベース部に細長い開口部があるのが特徴となっています。
日産ディーゼルは1996年に型式認定を受けCNGバスの正式販売を開始し、2007年まで大型~中型フルラインアップ化を進めました。
社番:D40303.KL-UA452KAN改(03年車)。2012年5月記録。
規制緩和により燃料ボンベの軽量化が可能となったことで、ボンベをルーフに設置したノンステップバスが1999年に登場。画像は京王バス東の永福町営業所にまとまった台数配置された西工ボディのUAノンステップCNG車。
島根200か108.2014年9月記録。
「2000年3月には国産初の中型CNGノンステップバスが発売 」開始となりました。画像の車両は松江市交通局が2001年に導入した車両。中国地方初導入となったCNG中型ノンステップ車で、ラッピングのスポンサーは「松江市ガス局」という分かりやすい1台でした。
フルラインアップ化を進めた日産ディーゼルでしたが、「2000年半ば以降は需要の翳りが顕著になるとともに、2005年には他社に先駆けて平成17年規制適合のディーゼル車を発売したこともあり、2007年をもって全CNGバスの販売を終えた 」とのこと。
短期連載では、194号で終了した「あの頃のバス 渡邊嘉也さんの写真帖から」が好評につき復活。1回だけのアンコールということで、今回は1970年代後半に撮影した近畿地方のバスのある風景写真を掲載しています。
もちろん「新 バスドライバーのひとりごと」や海外記事など、おなじみの長期連載も掲載しています。
次号予告は、バス事業者訪問:三重交通、電気バス最新情報、低公害バスの系譜をたどる⑥ ほか とのこと。
なお、本文中の「斜字 」部分は同誌からの引用部分、画像の型式・年式は掲載の車両一覧や記事を参照しています。
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