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バスラマ 202号

月内にまとめるのを諦めた感がある、バス雑誌の感想という名の定例報告。偶数月の刊行はバスラマこと、『バスラマインターナショナル 202号』です。

特集と銘打ったものは無い今号のバスラマ。代わりにイベントレポートと輸入電気バス最新動向に結構なページ数を割いています。イベントレポートでは福岡モビリティショーに展示されたバスを紹介。なかでも日野電気トラックをベースに改造した小型電気バスや三菱パジェロ改造の小型バスをさらに電気バス改造したという話題の車両は掲載写真多目で取り上げています。海外からは「Bus World 2023」。今回掲載の後編では観光系車両を中心に小型電気バスも紹介しています。

輸入電気バス最新動向では、市販第1陣として関東自動車と広島交通に登場したBYD製電気バス「K8」モデルチェンジ車 「2.0」、アルファバスから登場した小型電気バスL6、そして日本市場に参入するトルコ製小型電気バス「カルサンe-JEST」について詳しく紹介しています。

今回取り上げられた小型電気バス、アルファバスL6とカルサンe-JESTはどちらもコミュニティバスをターゲットとしているとのこと。とはいえ、 アルファバスL6は6mサイズで定員29人なので日野ポンチョのショートで運用している路線向け、一方のカルサンも6mサイズですが定員は23人。トヨタハイエースコミューターで運行しているような路線向け、もしくは7mサイズからダウンサイジングするようなところ向けとなりそうです。気がかりなのはカルサンe-JESTの「公表された車両価格は4300万円 」ということ。「バス事業者の金銭感覚や既に運行している大型電気バスに比較すると、サイズを考えればかなり高価格という印象は否めない 」とバスラマサイドも正直に書いてしまう販売価格です。導入事例がどれだけあるのか気になるところです。

また2月発売号の恒例となったバスラマ賞贈呈の模様も掲載しています。
第27回バスラマ賞は「脱炭素社会に向けたバスの挑戦」として多岐にわたる取り組みを行う西日本鉄道に贈られました。


社番:1188.2023年12月記録。
取り組みの一つとしてあげられたのが、「リニューアルディーゼルによる都市間高速バスの運行 」。画像の北九州空港へのエアポートバス専用車となっているいすゞガーラは、次世代バイオ燃料を使用していることをPRした全面ラッピング車となっています。

このほか、トピックスでは様々なバスの話題を取り上げていますが、気になったのはやはり「沖縄バスが東陽バスを買収へ」と題した記事。東陽バスの全株式を沖縄バスが取得する契約を締結したことを発表したことを簡潔にまとめています。これで本島4社が沖縄バス・東陽バスの地場資本勢と琉球バス交通・那覇バスの第一交通産業系の2陣営となりましたが、くしくも動態保存車として730車を保有する事業者が同一資本になりました。沖縄バスは過去、旧琉球バスの営業譲渡に名乗りを上げたものの条件面で折り合わなかったということがありました。今回の東陽バスはなんとしてでも傘下におさめておきたいという思いがあったのかもしれません。次号以降ぜひ両社首脳へのインタビュー記事を掲載して欲しいところです。

事業者訪問は「国際興業」と「佐賀市交通局」の2事業者を掲載。

まずは国内外でのリゾート経営をはじめ、幅広い分野で事業を行う「国際興業」。バス事業は都区内北部から埼玉県南部地域に路線網を展開し、貸切バスの営業も行っています。バスラマの事業者訪問は2005年刊行の93号以来、通算3度目となります。93号時点でのバス事業は「2001年に主要エリアに開業した埼玉高速鉄道による大きな影響を受け 」乗客減少に歯止めが利かない状況でした。さらに国際興業自体も深刻な経営危機から、いわゆるハゲタカファンドによる資産売却など、とにかく大変な時期でした。バス事業に大きな影響を与えた鉄道新線開業ですが、沿線人口増加につながり、新規路線開設や既存系統のテコ入れ・ダイヤ修正など様々な施策の結果「2015年度には年間輸送人員1億人を超え 」るまでになりました。国際興業のバス事業で輸送人員1億人というのは「1990年代前半に匹敵する数字 」とのこと。これが2020年の新型コロナ禍で急減してしまったのですから、どれだけ大変な状況だったのかがうかがえます。
記事では、路線バス、高速バス、貸切バスそれぞれの近年の動きを中心にまとめており、あわせて商事部門が取り扱うバス用品や関連システムも紹介しています。


社番:3006.QDG-LV290N1(15年車)。2024年2月記録。
国際興業の在籍車両は「グループに北海道いすゞ自動車を擁していることから大・中型車の全車と小型車の一部をいすゞが占め、ほかに小型車に日野とトヨタが在籍 」しています。
一般路線用の乗合車は大型車が主体で9割弱を占め 」、「大型車はいすゞエルガに統一 」されています。現在主力となっているのが2015年にモデルチェンジした2代目エルガで、「飯能以外の乗合全営業所に配置 」されています。AMTではなく「全車がトルコンATを装備 」しているのが国際興業のこだわりポイントです。


社番:5130.PJ-LV234L1(07年車)。2024年2月記録。
初代エルガは2006~2014年に導入した直6エンジンを搭載したワンステップ・ノンステップ車を中心に在籍しています。画像はノンステップ車では古参格となったPJ規制車で、車内シート配列は「ラッシュ型仕様 」となっています。ちなみにV8エンジンを搭載したKL規制車は飯能に2台残るだけとなりました。
さて、国際興業バスの一般乗合車の塗装は「1950年代から続く伝統的なデザイン 」で、「1997年からは各々の緑の彩度を上げた現行色 」を採用しています。エルガにモデルチェンジした際、若干曲線的な塗りわけにしましたがピンとこなかった模様、早々に現在の直線的なデザインに修正しました。


社番:6917.PKG-LV234L2(08年車)。2024年2月記録。
初代エルガワンステップの短尺車は2002~2010年にノンステップ車と並行して採用され、現在も174台が全エリアで活躍する主力車のひとつ 」となっています。


社番:8305.QPG-LV234N3(13年車)。2024年2月記録。
8000番台の社番は「多客路線用に2007~2013年式50台が5営業所に配置される初代エルガワンステップのホイールベース5.3m車 」です。このうち2013年にさいたま東営業所配置となった4台が「1950年代末から1997年までの新車に採用された先代カラーリング 」を施した復刻カラー車となっています。


社番:3803.2RG-LV290N4(24年車)。2024年2月記録。
運用路線事情にあわせ、同じように見えるエルガも実はこまかい仕様差をつけて導入している国際興業。24年から導入を開始している3800番台は、「都内向けの幅広中扉仕様 」となっています。


社番:1001.PDG-LR234J2(11年車)。2024年2月記録。
中型車は「狭隘路線や乗客の比較的少ない路線 」向けに導入しています。画像は中型車では最古参格となる11年導入の直6エンジン搭載モデルで、「豊島区地域公共バス」専用車となっているLRノンステップ車。ボディは豊島区PRキャラクター「としまななまる」の全面ラッピングを施しています。


社番:908.LKG-RU1ESBJ(12年車)。2024年2月記録。
高速バスは「夜行8路線、昼行2路線、空港連絡6路線を運行 」。運用車両は夜行が独立3列シートのスーパーハイデッカー、昼行・空港連絡が4列シートのハイデッカーとなっています。塗装は「貸切車のデザインをアレンジ 」したものを採用しています。
画像は池袋駅発着の空港連絡路線をメインとするガーラハイデッカー。

続いては、事業者訪問初登場の「佐賀市交通局」。佐賀県佐賀市の公営バス事業者で、現在は路線バスのみを運行しています。記事では市営バスの特徴を紹介するとともに、近年の取り組みや2023年に行われた佐賀県内路線バス運賃が無料となった「さがバスまるっとフリーDAY」の効果などもまとめています。
佐賀市交通局は輸送人員の減少に歯止めが効かない2000年代初めに「公営企業の体質が問われ、市営バスの民営化の議論もありました 」が、いろいろあって市営バスとして継続することになりました。市営バスを継続することが決定してからは継続的な新車導入でノンステップ化を進めるとともに、「様々なアイデアを凝らした新しい試みがお客様に評価され 」輸送人員も底だった2005年度の254万人から2018年度は「325万人を計上し2003年度以来15年ぶりの「300万人超え」」になるまで回復しました。
小生が初めて佐賀市営バスに乗車した2012年は、古参のツーステップ車だけでなく2000年代初めに導入したノンステップ車もボディは薄汚れていて、正直日々の手入れを真面目にしてこなかったとしか思えないような状態でした。そこから徐々に見てくれが良くなっていき、復刻カラー車の登場などマニア的な施策も行うようになるのだから変われば変わるもんだと思ったものです。
あわせて編集長が1978年に佐賀駅周辺で撮影した懐かしいバスの写真を「佐賀市のバス アーカイブス」として掲載しています。せっかくなら、佐賀市営バス復刻カラーバス車内に展示している懐かしい写真もあわせて掲載してほしかったところです。


車番:820.SDG-LR290J1(14年車)。2023年10月記録。
在籍車両は「2024年2月現在、小型3台、中型55台、大型15台の合計73台 」となっている佐賀市交通局。後述する空港線専用のハイデッカー車を除き、全車ノンステップ車となっています。古参のツーステップ車はもちろん、初期導入したノンステップ車も代替が始まっていたとは知りませんでした。
在籍車両数から分かると通り、路線バスは中型車をメインにしています。中型車でも圧倒的な台数を誇るのがいすゞLRノンステップ車で、画像の旧モデルとモデルチェンジした現行モデルあわせて48台在籍しています。画像の車両の塗装はコスト削減のため帯デザインを簡素化したもので、1990年代末期から2010年代に採用していました。


車番:786.PDG-KR234J2(09年車)。2023年10月記録。
いすゞLRが大多数を占める中、09年に3台だけ導入した日野KRノンステップ車。04年に導入した9mサイズのHRが代替されたことから「日野ブランドの中型車はこの3台だけ 」となっています。


車番:877.2KG-LR290J5(23年車)。2023年10月記録。
16年から導入を開始した現行モデルのLRは、いまや「23台まで増えていて存在感は大きい  」ものとなっています。2010年代後半から塗装は帯デザインに修正を加えており、「最近の入籍車両からオレンジ色の部分に赤の細線が加わった 」デザインとなっています。ここまできたらぜひ正面にも赤の細線を加え、1990年だ後半の短い期間だけ採用された塗装デザインの完全復活をお願いしたいところです。


車番:837.SKG-LR290J2(17年車)。2023年10月記録。
佐賀市のPR媒体としても活用される機会が多く、様々なラッピングで行政のイベントやキャンペーンのPR役を担っている 」のも佐賀市交通局の特長といえます。画像の車両のラッピングは交通マナーを啓発したデザインです。


車番:771.KL-JP252NAN改(02年車)。2023年10月記録。
中型車の導入がメインとなったことから、いまのところ最後の生え抜き大型車となっているのが画像のJPノンステップ車です。デンソー製クーラーを搭載し、側面行先表示は中扉よりも後に設置しています。


車番:823.KL-JP252NAN改(01年車)。2023年10月記録。
大型車は東京都交通局からの移籍車導入で代替を行っています。画像のJPは東京都交通局が中古車として売却を再開した2014年に導入した車両です。側面行先表示の移設改造は行っていないので、前扉直後設置のままとなっています。
佐賀市交通局では年式的に最古参格となった01年車ですが、代替対象にするのは年式重視なのか、状態重視なのか気になるところです。


車番:858.KL-LV280L1改(03年車)。2023年10月記録。
東京都交通局からの移籍車はJPを継続導入したため、完全な大型ノンステップ車は2019年にようやく登場しました。KL規制車のいすゞLVで特筆すべきは複雑な帯デザインの1980年代に採用していた塗装で登場したこと。佐賀駅バスセンターとゆめタウンを結ぶ路線の専用車となっています。


車番:117.ADG-HX6JLAE(07年車)。2023年10月記録。
比較的狭隘路が多い路線の閑散時間帯のダイヤを担当している 」小型車。全車日野ポンチョの移籍車で、生え抜きの日野RXを代替しました。生え抜きの日野RXは退色激しい赤色だったり標準塗装だったり、トップドアだったり前中扉だったりとバラバラでしたが、日野ポンチョはロングサイズ2扉仕様で揃えられています。ただシート配列は異なり、画像の車番117と118は「窓を背にしたシートレイアウト 」となっています。


車番:818.PKG-RU1ESAA(08年車)。2023年10月記録。
佐賀駅バスセンターと佐賀国際空港を結ぶ佐賀空港連絡バスは国際線就航にあわせ移籍車でハイデッカー車を導入しました。「新規就航に合わせて空港線の専用車両を増備、現在5台体制 」となっています。塗装はかつて営業していた貸切車で採用していたデザインを採用しています。

短期連載「カタログで偲ぶ“平成初期”のバス達」。第3回目は「日産ディーゼル スペースウイング」を取り上げています。スペースウイングは1984年に2階建てバスと共通シャーシーをもつ3軸スーパーハイデッカーを翌1985年にフルモデルチェンジした際に名づけられたモデルです。今回掲載されたカタログは3軸車に加え2軸のスーパーハイデッカーも販売を開始した「1990年6月に発売された平成元年排出ガス規制適合車(U-) 」のもの。当時のメーカー標準だった富士重工製ボディがカタログ掲載モデルとなっていますが、ボディは15型HD-Ⅱというのがポイント。これは富士重工のスーパーハイデッカーボディのモデルチェンジが1992年に行われたため。「大型観光車は他の3車種で新モデルが相次いだこともあり、陳腐化が否めなかったのも事実である 」と、きちんと記しておくのがバスラマならではです。



群馬200か463.U-RA520SBN。2005年11月記録。
スペースウイングの画像で、しかも3軸車となると、手持ちの画像はこれだけ。国際十王交通が東京福祉大学送迎で使用していた車両です。おそらく学校所有の白ナンバー車を緑ナンバーにした車両だと思いますが、大学の開校と年式が合わず・・・。どんな経歴を持つ車両だったのでしょうか。画像から屋根にエアコン機器を搭載していることが分かりますが、これは3軸車の「標準の空調機器は富士重工製で、エンジン直結式フルオートエアコン 」を採用していたためです。

このほか「新 バスドライバーのひとりごと」や海外記事など、おなじみの長期連載も掲載しています。
 
次号予告は、2024春のオムニバス(全国のバスの最新情報)、バス事業者訪問No253、カタログで偲ぶ“平成初期の”バス達⑤ ほか とのこと。何度も書いていますが、ヒミツとなっているバス事業者訪問は手持ち画像を確保したいので、公式ブログで早めに公表してほしいものです←わがまま

なお、本文中の「斜字 」部分は同誌からの引用部分、画像の型式・年式は掲載の車両一覧や記事を参照しています。
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